超重要‼︎ 新型コロナ対策の戦略は「正しく診断」ではなく、「正しく判断」【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑩】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

超重要‼︎ 新型コロナ対策の戦略は「正しく診断」ではなく、「正しく判断」【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑩】

命を守る講義⑩「新型コロナウイルスの真実」

 ◼️症状から「正しく判断」する戦略性

 鼻水が出ていて喉が痛いだけの人が診察に来たとき、その人は新型コロナウイルスに罹っているかもしれないし、従来のコロナウイルスに罹っているのかもしれない、他の風邪のウイルス、例えばライノウイルスかもしれない。
この場合、その人の正しい診断名は分からないけど、お家うちで寝ててもいい患者であるという判断はできる。これが、診断はできないけど判断はできる、ということです。
次に来た患者さんは、息がぜーぜーしていて、血液中の酸素の飽和度をモニターすると、普通の人なら95〜97パーセントくらいあるところ、80パーセントしかない。明らかに酸素が足りない状態ですから、入院して酸素の治療をする必要があります。
この人をPCRで検査して仮に陰性だったとしても、症状からは新型コロナウイルスの感染が疑われます。だから、病院でちゃんと隔離はしましょう。医療者側もPPE(防護具)を着けて、安全対策をしっかりして治療しましょう、という判断ができます。
現段階では、コロナであるという「診断」はできていないけれど、コロナであるという「判断」をしておけば、対応に間違いはない。仮に違う病気だったとしても対応できる判断をすればいい。
これが、正しく診断することを放棄して、正しく判断するということです。
個々の患者さんの病名を診断するのではなく、この人は家に帰せるか、入院してもらうべきか。あるいは病院に来ないといけない人なのか、そもそも病院に来なくてもいい人なのか。その観点での判断をすべきだし、その観点でしか判断できないんです。
じつはこれまでにも、正しく診断することが現実的ではなく、本来は正しく判断する戦略を取らないといけなかった感染症があります。
それは、インフルエンザです。
じつは病院で使うインフルエンザの迅速キットって、結構間違えるんです。新型コロナウイルスのPCRと同じく6割程度の感度しかありません。だからインフルエンザの迅速キットで陰性でも、やっぱりインフルエンザに罹っている人はいくらでもいる。
日本の医者って検査好きなので、他の国に比べてすぐに検査をします。そして、結果が陽性だとインフルエンザで、陰性だとインフルエンザじゃない、と思っている医者は割と多い。医者がそう思っているくらいだから、患者さんでもそう思ってる人は多いのでしょう。
ところが、検査が陰性にもかかわらず、やっぱりインフルエンザだったということが結構あるんです。
だからインフルエンザも正しく診断することは諦めて、いま説明した「正しく判断」する戦略を取るべきだったんです。
でもこれまでは、インフルエンザで病院に行くと医者は検査結果を見るし、会社は「診断書を取ってこい」とか言うし、患者さんも検査の結果が陰性だと安心していましたよね。インフルエンザに罹っていても4割近い確率で陰性の結果が出るんだから、本当は、それで安心するなんてナンセンスなのに。
「新型コロナウイルスの真実へつづく)


 【注】本書『新型コロナウイルスの真実』は現在、発売即4刷となりましたが、書店の休業などで「お手元に届かない」との多くの皆さまからお問い合わせが入っております。最新刊でありますが、本書の第1章と第2章を「全文再編」連載という形で、皆様にお届けいたします。著者・岩田健太郎先生のご厚意により、最適な感染症対策への一助となるように専門家として何度もお読みいただけるようにとご配慮いただきました。皆様やご家族、多くの方々の安全を祈念申し上げます。なお全国の書店で配本されていますが、くれぐれも「外出」の際は感染経路と感染の知識を踏まえ、ご行動されることを衷心よりお願い申し上げます。


  

KEYWORDS:

岩田健太郎医師の最新著書『新型コロナウイルス』は現在、ネット書店で手にいれづらくなっております。こちらで購入が可能です

 

 【URL】https://bestsellers.official.ec/items/28385984

  

発売即重版3刷
『新型コロナウイルスの真実』
岩田健太郎医師・著

 

オススメ記事

岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

新型コロナウイルスの真実 (ベスト新書)
新型コロナウイルスの真実 (ベスト新書)
  • 岩田 健太郎
  • 2020.04.11
インフルエンザ なぜ毎年流行するのか (ベスト新書)
インフルエンザ なぜ毎年流行するのか (ベスト新書)
  • 岩田健太郎
  • 2018.11.09